舌側矯正とは

マルチブラケットを歯の裏側に装着する矯正治療です。装置が目立ってしまう表側矯正とは異なり、ほかの人からは装置がほとんど見えないようになります。お仕事やプライベートなどで口元を見られる機会が多い方に適しており、一般的な矯正治療では口元が目立ってしまうためにためらっていた方でも安心して治療を受けられます。
舌側矯正と表側矯正では治療の結果や治療期間にも大きな違いはありませんが、舌側矯正の方が装置の製作コスト、チェアータイムの都合上、価格が高くなります。しかし、高い審美性を確保できます。出っ歯のように表側に装置を装着すると目立つケースには向いています。舌側矯正は高い技術を要するため経験を積み重ねた医師、スタッフが対応します。
こんな方におすすめ

仕事の都合で
口元を目立たせたくない

吹奏楽やスポーツを
趣味にしている

出っ歯が気になっている

商談の機会が多い職業や、人前に立つことが多いお仕事などのために、表側矯正を受けられないというケースもあるのではないでしょうか。こうしたお仕事をされている方には、装置が見えない舌側矯正が向いています。また、管楽器を吹く方、格闘技などのスポーツをされている方にとってはケガのリスクを抑えられる治療になります。出っ歯などでお悩みの方にも向いています。
・矯正治療の一般的な治療費は60万~150万円、一般的な治療期間は2~3年、一般的な治療回数は24~36回となります。
・矯正治療は公的健康保険対象外の自費診療となります。
・薬機法(医薬品医療機器等法)未承認の矯正装置は、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
・治療の主なリスク・副作用については、ページ下部をご確認ください。
メリット・デメリット
メリット
装置が見えにくい
歯の裏側に装置が付くので、ほかの人からは見えません。矯正治療をしていることを知られたくない方などにおすすめです。
虫歯にかかりにくい
装置が付いたところは歯磨きしにくくなりますが、歯の裏側はエナメル質が厚く、唾液が循環しやすいため虫歯のリスクを抑えられます。
悪習癖が改善しやすい
舌癖がある方は、歯がもとの位置に戻る「後戻り」のリスクも高まります。舌側矯正は舌癖防止の機能もあるため、後戻りしにくくなります。
デメリット
装置が舌に触れる
装置を付け始めたころは、舌が当たることで痛みや違和感を覚えることがあります。装着直後は発音しにくなることがあります。
食べにくい
取り外しできない装置のため、食べにくく感じる場合があります。
歯磨きがしにくい
歯の裏側そのものが磨きにくいところですが、そこに装置がつくためより難しくなります。
費用が高い
表側矯正に比べて価格が高くなります。
舌側矯正につかう装置の種類
フルリンガルブラケット

メリット
上下の歯列の裏側に矯正装置を取りつける治療法です。口を開けたときでも相手からは装置が見えにくく、ほかの人からは気づかれずに矯正治療を受けられます。また、口元が突出するような違和感がなく、スポーツによるケガのリスクも軽減されます。
デメリット
舌が装置に当たるため、はじめのうちは違和感があります。また、発音しにくく感じる場合があります。舌側矯正は装置の製作コスト、チェアータイムの都合上、価格が高くなります。
ハーフリンガルブラケット

メリット
目立ちやすい上の歯列にはリンガルブラケットを装着し、下の歯列にはセラミックブラケットをセットします。上の前歯などは装置が見えず、下の歯も目立たない装置を使うことで審美性を高めます。上下舌側矯正にするよりも価格を抑えられます。
デメリット
審美性はフルリンガルには劣ります。
舌側矯正に関するよくある質問
Q痛みなどを感じることはありますか?
A矯正装置を取りつけた直後は、痛みや違和感を覚えるという方が多いです。しかし、強い痛みというほどではなく、徐々に慣れていきます。舌側矯正は舌が装置に当たりやすくなりますが、ブラケットをワックスで覆うことで痛みや違和感を軽減できます。
Q舌側矯正は虫歯になりやすいでしょうか?
A矯正装置がつくのは歯の裏側ですが、表面よりもエナメル質が厚く、虫歯に強いという特徴があります。また、下顎の歯の裏側は唾液が循環しやすいため、歯磨きが難しくても虫歯リスクが低くなります。もちろん、丁寧に歯を磨いて汚れを取ることが前提です。
Q発音はしにくくなるでしょうか?
A舌が矯正装置に当たることにより、サ行、タ行、ラ行といった音がやや難しくなります。しかし、多くの方は発音に慣れていき、長くても1ヵ月ほどで問題なく発音できるようになります。
Q舌側矯正中は食事で注意すべき点はありますか?
A矯正装置の装着時、または調整したときは硬いものが食べにくくなります。痛みが出やすいということもありますが、矯正装置が外れたり壊れたりすることもあります。軟らかい食べ物で少しずつ慣れるようにしたり、小さく切ってから食べたりすると良いでしょう。
Q舌側矯正とマウスピース型矯正装置(インビザライン)による治療はどちらがおすすめですか?
Aマウスピース型矯正装置(インビザライン)は取り外しができます。食事や歯磨きのときは快適ですが、決められた時間装着するためには患者さまご自身の管理が不可欠になります。装着時間を守るのが難しそうな方には、舌側矯正の方をおすすめしています。症例によってはマウスピース型矯正装置(インビザライン)を適用できないこともあるので、検査をしたうえでご説明します。
●リスク・副作用
○矯正治療にともなう一般的なリスク・副作用・矯正治療の一般的な治療費は60万~150万円、一般的な治療期間は2~3年、一般的な治療回数は24~36回となります。使用する装置、症状や治療の進行状況などにより変化しますので、参考程度にお考えいただき、詳細は歯科医師にご確認ください。
・機能性や審美性を重視するため、公的健康保険対象外の自費診療となり、保険診療よりも高額になります。
・最初は矯正装置による不快感、痛みなどがあります。数日から1~2週間で慣れることが多いです。
・治療期間は症例により異なりますが、成人矯正や永久歯がすべて生えそろっている場合は、一般的に1年半~3年を要します。小児矯正においては、混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に行なう第1期治療で1~2年、永久歯がすべて生えそろったあとに行なう第2期治療で1~2年半を要することがあります。
・歯の動き方には個人差があるため、治療期間が予想より長期化することがあります。
・装置や顎間ゴムの扱い方、定期的な通院など、矯正治療では患者さまのご協力がたいへん重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
・治療中は、装置がついているため歯が磨きにくくなります。虫歯や歯周病のリスクが高まるので、丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。また、歯が動くことで見えなかった虫歯が見えるようになることもあります。
・歯を動かすことにより歯根が吸収され、短くなることがあります。また、歯肉が痩せて下がることがあります。
・ごくまれに、歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
・ごくまれに、歯を動かすことで神経に障害を与え、神経が壊死することがあります。
・治療中に金属などのアレルギー症状が出ることがあります。
・治療中に、「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口をあけにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
・問題が生じた場合、当初の治療計画を変更することがあります。
・歯の形状の修正や、噛み合わせの微調整を行なうことがあります。
・矯正装置を誤飲する可能性があります。
・装置を外すときに、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、補綴物(被せ物など)の一部が破損することがあります。
・装置を外したあと、保定装置を指示どおりに使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
・装置を外したあと、現在の噛み合わせに合わせて補綴物(被せ物など)の作製や虫歯治療などをやり直す可能性があります。
・顎の成長発育により、歯並びや噛み合わせが変化する可能性があります。
・治療後に、親知らずの影響で歯並びや噛み合わせが変化する可能性があります。
・加齢や歯周病などにより、歯並びや噛み合わせが変化することがあります。
・矯正治療は、一度始めると元の状態に戻すことが難しくなります。
・機能性や審美性を重視するため、公的健康保険対象外の自費診療となり、保険診療よりも高額になります。
・装置に慣れるまで発音しづらいなどの症状が出ることがあります。
・矯正装置を装着している期間は、適切に歯磨きができていないと、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。歯磨き指導をしますので、毎日きちんと歯を磨き、口腔内を清潔に保つようご協力をお願いします。
・歯磨き、エラスティック(顎間ゴム)の使用、装置の取り扱い、通院などを適切に行なっていただけない場合、治療の期間や結果が予定どおりにならないことがあります。
・成長期の患者さまの治療では、顎骨の成長を予測し、現段階において適切な治療を行ないますが、まれに予期できない顎の成長や変化によって治療法や治療期間が大きく変わることがあります。また、顎の変形が著しい場合には、矯正治療に外科的処置を併用することがあります。
・歯を移動させることにより、まれに歯根の先端がすり減って短くなる「歯根吸収」を起こすことがあります。しかし、適切な矯正力で歯を移動させることでセメント質(歯根表面を覆っている組織)が修復されるため、歯根吸収のリスクを軽減できます。
・歯の周囲の組織は、治療前の状態に戻ろうと「後戻り」する性質があるため、治療後も数ヵ月から1年に1回ほどの頻度で通院いただいて歯の状態を管理し、後戻りを防ぐ必要があります。